昨日16日に倒産した取引先の債権者への説明会があった。
数ヶ月前から不祥事、経営不振、上場廃止ときて、結局来るべきものが来たという感じである。
しかしこの日まではなんとかなるだろうという楽観的な気分でいたような気がする。
説明会に出て初めて「本当にお金が入ってこないんだなぁ」
「来月からどうやって資金繰りしていけばいいんだろう」
ということが実感としてストンと腹の底に落ちたのかもしれない。
ただ、これといって何か打つ手があるわけではもない。経費を減らし、給与を減らし、賞与を減らし。
一生懸命働いて仕事を増やして、銀行などは行くだけ無駄だろう。
従業員に迷惑をかけるより「いよいよ事務所を閉めるかなあ」
などと考えながら会社に戻ってきた。
妻には二三日前から「いよいよだめかもよ」などと言ってあって、この日も別段変った話をしたわけではなかった。
なんで潰れた会社が借金を免除してもらって「がんばります!」などと営業を続けていくのに、債権を放棄させられる側は「ひょっとして連鎖倒産」などということが目の前をちらつきながら、入ってこないお金を穴埋めしする辛い目に逢わなければならないんだろう。
というような愚痴ともつかない話をしたのはこの日だったかもしれない。
いつもどおり0時半ぐらいに床に就いた。うちの寝室はセミダブルとシングルをくっつけていて、子供が小さいのでいわゆる川の字に寝ている。
ラジオを1時間ぐらいで切れるようにセットして聞くとはなく聞きながらスーッと引き込まれるようにして寝た。
次の瞬間、気がつくと私はベッドの上で座っていた。
妻も座っていて私の腕を掴んで「大丈夫?」「どうしたの?」などと体をゆすっていた。
子供は横になっていたが寝てるのか起きてるのか、「えー」というような声を出していた。
何が何だかさっぱりわからなかった。
ただ恐怖と不安が頭の中に充満していた。
パニック状態の頭で一生懸命考える。泥棒?火事?急病?
ともかく私に対して「大丈夫か?」と聞いているようなのでともかく「大丈夫、何でもない」と答える。
「怖い夢でも見たの?ずーっと大きな声を出していたのよ」
まったく記憶がない。
以前泥棒が入ってきた夢を見て「ドロボウ!」と叫んでしまったことがあったがそれとは違う。そのときは泥棒が入って来た夢をみていたが、今は起きる直前の夢の記憶がまったくない。
子供がもぞもぞと少し起きているような様子があったので「ごめんね、何でもないよ」と体をトントンと叩くと寝てしまった。
腕をつかんでいた妻が「ひどい鳥肌よ」という。
確かに背筋がゾーッとして、全身に鳥肌が立っている。
波が押し寄せるように背筋がゾーッとしてはザーっと鳥肌が立つの繰り返し。
あまりにびっくりしたせいだろうと考えていたのだが一向に治まらない。
夏の暑い夜なのに毛布をすっぽり肩までかぶって汗をかきながら横になっていた。
何が何だかさっぱりわからない。なぜだかひどい恐怖感にとらわれていて、寒気がおさまらない。
4時ぐらいまでそうして恐怖と闘っていたが、寝られなかった。
階下に降りて水を飲み、以前内科医に眠れないときにともらったデパスという薬を飲んだ。
心がすっかり怖気づいてしまっていて物陰から何か現れるのではないか、お化けがでるのでは、泥棒がその辺に潜んでいるのでは、窓の外から誰か覗いているのでは・・・
そんな思いが頭からはなれない。
誰でもたまにはそんな感覚に襲われることはあるとおもう。私も稀にそういうことがあるが、何時間も続くということは初めてのことだ。寒気と全身に鳥肌を立てながらまた二階で毛布にくるまって必死で馬鹿な考えを追い出そうとしていた。
薬が効いてきたのだろう。しばらくして寝たらしい。
夢を見た、
ベッドの横の壁が白く光っている。中心部が白く、周辺が黄色い光で縦長の楕円だ。
「あ、これさっきも見たな」と思いつつ壁と反対側の妻と子供の方へ寝返るときに、
「ああ、ここから座って先ほどの状況になったんだな」という気がして眼が醒めた。
ただ、現実味がない。何の根拠もない単なるこじつけにすぎないのだろう。夢にはよくあること。
また、この夢には恐怖感が伴っていなかった。寝返るとすぐまた寝てしまった。
昨夜起きたことは以上だ。
後日妻に聞いてみたところ、妻が目を覚ました時は既に私はすわっていたという。
うつむき加減で「おー」とか「あー」とか大声をだしていたという。
子供もおどろいて「パパー」「パパー」と言っていたそうだ。それは記憶にない。
そして私の腕をつかんで「大丈夫」「どうしたの」とゆさぶり起こしたということだ。
念のため言っておくが私は怪奇現象とか心霊現象などはまったく信じていないし。そのような経験をしたこともないし、そのような経験をしたという人にも会ったことがない、まったくの懐疑派である。
取引先倒産のストレスか何かで怖い夢でも見て寝ぼけたんだろう。
およそそのような解釈をして自分を納得させた。